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Atomic Heart レビュー

ロシア製アクションRPGは激しい戦闘とパズル要素のハイブリッドでプレイヤーを魅了する。
ロシア製バイオショックなどと言われているが制作陣がロシア出身というだけでスタジオ Mundfish はキプロスにあるようだ。オープニングから凝りまくった世界観が提示される。確かにこれはかのゲームでも見られたマナーだ。注目すべきはそのコンセプトクオリティにある。


空中都市チェロメを巡る水路に浮かぶ小舟に乗るとそこで暮らす人々やコンパニオンロボットの紹介がなされる。スローガンや巨大彫像などから半世紀以上前のロシア連邦がモチーフになっていることが理解できる。プレーヤーは緻密に構成されている世界観に徐々に馴染んでいく。


家庭用ゲーム機 (Xbox ONE) に最適化を受けてもグラフィックのレベルとクオリティが恐ろしく高い。どこを眺めていても珠玉の光景で満足出来ると言っていい。建物の外構と内装や小物、ロボットデザインは独自性とこだわりに於いて他のタイトルより頭一つ抜きんでているのでは。現世代機やPCでプレイすればロードも早く更に美しいに違いない。


1950年代に他国を圧倒するような技術的ブレイクスルー「導電性ポリマー」の実現によって自律型ロボットとサイバネティクスとネットのようなものが進化した社会が存在したという設定のようだ。その隆盛をしっかり見せられた後、ロボットたちの反逆鎮圧をプレーヤーは託される。

ローカライズが行き届いていて小さなポスターでさえ字幕があり意味を読み取る助けになるのは良い。西欧に対する視点などがアイロニカルな表現の中に伺えて非常に興味深いし勉強になる。

ロボットのデザインはレトロフューチャーの文脈が感じられる。女性型ロボ「テレシコヴァ」はこのゲームで唯一終始友好的で気を許せる相手。殺伐とした世界ではキャラのブレない彼女が癒しの女神であった。サチノフ博士のワークスペースにいた2体の女性型「レフト」「ライト」これは何も言うまい。ベースグレード兵士ヴォヴァはなんともコミカルな出で立ち。よろよろ接近してきてCQB距離では素早いステップ手練れの動きで翻弄してくる。


今紹介したロボット以外は全てシビアな戦闘相手になる。探索目標「3826番施設」に入るとアクションFPSではないことに気づく。様々なパズルを左手に実装されたアビリティ「チャー・ルズ」も使いながら解いていくのだ。謎解きと戦闘のハイブリッドが続いていく辺りバイオショックとの類似性も。建物内の閉塞感もあり気が抜けない。多彩なスキルや武器のアップグレードを利用してパズルを解きながら敵との戦闘を繰り返し進む。この施設を出るとオープンワールドでの探索と戦闘が待っている。

Atomic Heartの実に惜しいポイントがここにある。このフィールドのゲーム設計には難があり評価が分かれる所だと感じた。一言でいえば指示された行動のリスクが対価に見合わないバランスの悪さがある。建物から出たのにフィールドを回遊するモチベーションが上がらない状況に陥る。しかしこれらの調整不足はAtomic Heartを避ける理由にはならない。欠点を補って余りあるほどの魅力がゲームにあるからだ。

独創的な世界観と秀逸なデザインが突き抜けたグラフィックで表現されるAtomic Heart。ゴリゴリのロボット戦も最高だ。サウンドトラックは秀作揃いでこの異質な世界での体験や戦闘を盛り上げる。ぜひこの個性的なアクションRPG(公称)を一度プレイしてほしい。