HUMANITY レビュー

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新ジャンルパズルゲーム。クールなビジュアルと拘りのサウンドトラック。優れたユーザビリティでプレイ継続性は高い。

 ゲームをプレイし始めて直ぐに頭に浮かぶのは「I.Q(インテリジェントキューブ) 1997年」。だがよく観察していくとシステムもプレイ感覚も全く違う。共通項は異分野の敏腕クリエーターのアイディアを昇華してゲームとして完成させている事だけだ。リマスターやナンバリングの新作が多い業界に新風を吹き込む。

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プレイヤーは柴犬となってカオスをコントロールする。

 人の群れをポイントに誘導するという基本ルールはシンプル。プレイヤーは柴犬となって怒涛の行進をゴールに導く。落下を防ごうにも全てをコントロールするのは難しく「ステージから落下消失する群衆はスタート地点にリスポーン。」という設定のようだ。このエクスキューズがないと色々と気になるのでありがたい。実際序盤はこの群衆のバラエティと無機質さを考える時間になった。

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 群体シミュレーションの出来が良過ぎて「大局に翻弄される市民」がリアルだ。ステージから湯水の如く落下するビジュアルが史実を思い起こさせる。有史以来、歴史の転換点のイベントでは多数が一瞬にして消滅する。FPSを漫然とプレイする自身も矛盾を感じるが、群体が「のようなもの」や明らかな敵性キャラであればと感じたのだ。プレイを進めていくと段々そのような感情も無くなっていった。

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ステージは美しくSEやBGMも最高だ。

 実のところ制作陣は「プレイの感触」「群衆」「人間性」を入念に議論したはず。序盤で一本道の群衆を使って思考なき同調行動の問題を描き出し、後半敵性の「others」を出現させ不毛な対立とそれが生む負のスパイラルを場の混沌でプレイヤーに体験させる。

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 ゲームの無機質さを補完するだけの存在と思っていた柴犬と「Goldy」の意味が徐々に浮かび上がる。プレイヤーは失われた人間性の回帰を担う船頭だ。このように色々思案させる「HUMANITY」はメジャータイトルへのカウンターであり意欲的な素晴らしい作品だと感じたのだ。        

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 プレイヤー (柴犬) は徐々に能力をアンロックされて群衆の方向を変えたり飛ばしたり出来る。パズルは多種多様でステージによってはスイッチトリガーとして群衆を流しておくパターンや群衆を使うギミックもある。「Goldy」は収集とボーナス要素を兼ねていて群衆同行にはレイブ感もあり盛り上がる。基本「Goldy」はゲームがより楽しくなるので積極的にゴール同行させたい。

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GOLDYはボーナス要素でやり込み派には嬉しい。

 難易度が上がるにつれトライ&エラーになるが、ユーザビリティが素晴らしくリプレイ時の負担を減らす工夫や詰んだ時に頼りになる正解ムービー (全ステージ!) も実装。肉声をコラージュしたBGMやSEが白眉だ。プレーの余韻を与え続ける秀逸なものになっている。

 プレイの狭間に存在するプレステージは美し過ぎでじっくり鑑賞してしまうほど。ゲームから伺えるミニマリズムによる引き算の美学。群体の有機的な動きや混沌のリアルさ。ステージデザインの美しさ。それらを子細に捉えることが可能なカメラ。「HUMANITY」は「見るゲー」としてもプレイヤーの視覚を深く魅了するレベルにある。このチームが次に発表する枠に収まらないタイトルを期待したい。

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